治療の流れ Flow

インプラントによる治療の流れ

インプラントによる治療の流れ

インプラントによる治療は長期にわたるもので、精密検査や手術、治癒期間など、さまざまなプロセスがあります。手術をより安全に行なうのはもちろんですが、そのためには検査で患者さまの状態をより正確に把握する必要があるなど、それぞれの工程が重要な意味をもっています。また、治療方法には「1回法」と「2回法」という種類があり、治療の流れが異なってきます。それぞれの特長を紹介するので、インプラントによる治療を考えている方は参考になさってください。

1回法と2回法との違い

インプラントによる治療には1回法と2回法があり、それぞれ歯肉を切開する手術の回数を表しています。1回法はインプラントを埋入する際にアバットメントも取り付けるので手術は1回のみですが、2回法は2次手術でアバットメントを連結します。1回法は全体の治療期間が3~7ヵ月ほどになりますが、2回法は2回目の手術を行なった後に歯肉の治癒を待つ期間があるため、全体で4~8ヵ月ほどかかります。
このように、2回法は1回法に比べて治療期間がかかりますが、1回目の手術で傷口をふさぐので細菌に感染するリスクを抑えられるというメリットがあります。

1回法

  1. STEP 01

    カウンセリング・診査

    患者さまのお悩みやご希望を伺い、インプラントによる治療についてご説明します。治療を希望される場合は精密検査に進み、噛み合わせや顎骨の状態などについて調べます。検査結果などをもとに治療計画を作成し、患者さまがご納得されたら治療へ移ります。

    初診相談
  2. STEP 02

    インプラントの埋入手術をする

    インプラントを埋め込むための手術を行ないます。患部に局所麻酔をして痛みを抑えられるように処置をしてから歯肉を切開し、ドリルで顎骨に穴を開けます。そこにインプラント体を埋め込み、アバットメントとよばれる支台を取り付けて露出した状態にします。このときに仮のアバットメントを付ける場合もあります。

    初診相談
  3. STEP 03

    インプラント体と顎骨を結合させる

    埋め込んだインプラント体と顎骨が組織的に結合するまで待つ期間に入ります。結合するまでの期間は、使用するインプラントや患部の部位、症状などによって異なりますが、上顎で6ヵ月ほど、下顎で3ヵ月ほどかかる場合があります。

    初診相談
  4. STEP 04

    人工歯を装着する

    顎骨とインプラント体が組織的に結合したのを確認し、被せ物となる人工歯(上部構造)の取り付けに進みます。仮のアバットメントを使っている場合は、最終的に使用するアバットメントに取り替えます。人工歯の噛み合わせや色調などを調整し、治療は完了となります。

    初診相談

2回法

  1. STEP 01

    カウンセリング・診査

    1回法と同様に行なわれます。

    初診相談
  2. STEP 02

    インプラント埋入の手術をする(1回目の手術)

    インプラントを埋め込むための手術は、1回法と同様に行なわれます。しかし、インプラント体を埋め込んだ後はアバットメントを取り付けず、インプラント体に蓋をするように歯肉を被せて縫合し、1回目の手術を終わります。

    インプラント埋入の手術をする(1回目の手術)
  3. STEP 03

    インプラント体と顎骨を結合させる

    1回法と同様にインプラント体と顎骨が結合するのを待ちます。

    インプラント体と顎骨を結合させる
  4. STEP 04

    アバットメントを連結させる(2回目の手術)

    インプラント体と顎骨がしっかり結合したのを確認し、アバットメントを連結させるための手術を行ないます。局所麻酔をして患部の歯肉を切り開き、埋入されているインプラント体にアバットメントを取り付けます。手術後は歯肉の形が整うまで1~2週間ほど待ちます。必要に応じて仮歯の調整をします。

    アバットメントを連結させる(2回目の手術)
  5. STEP 05

    人工歯を装着する

    歯肉の形が整ったら、最終的な人工歯(上部構造)を作製するために型取りをします。歯の形や噛み合わせが調和させるためにも、大事な工程となります。人工歯が完成したらアバットメントに取り付け、噛み合わせや色調などを調整して完了となります。

    人工歯を装着する

手術について

手術について

インプラントによる治療では外科的な手術を行なうため「治療が怖い」と感じる方もいらっしゃいます。顎骨に穴を開けてインプラントを埋め込むという工程を聞くと、不安に感じるのも無理はありません。しかし、手術の際は局所麻酔を行なうので、治療中の痛みはほとんど感じません。治療に要する時間は歯1本あたり10~30分ほどとなり、本数が少ない方であれば1時間弱ほどで手術が終わります。
一方、手術そのものに極度の不安を感じるという方もいらっしゃいます。その場合、歯科医院によっては「静脈内鎮静法」を用意しているところがあります。静脈内鎮静法は、点滴によって精神安定剤を注入し、半分眠ったような状態になるというものです。意識が薄れる中で手術を受けるので恐怖心が軽減されます。手術に不安があるという方は、静脈内鎮静法を行なう体制が整っているか、歯科医院で相談されるとよいでしょう。

静脈内鎮静法

患者さまにリラックスした状態でインプラント手術を受けていただくため、「静脈内鎮静法」という麻酔法を実施しています。点滴で静脈内に少しずつ鎮静剤を投与してウトウトと眠っているような状態をつくり出し、緊張をほぐします。リラックスした心地良い状態になり、不安や恐怖心を感じなくなるので、「気づいたら終わっていた」という感覚で手術を受けられます。全身麻酔とは異なり、意識があるまま手術を受けられ、手術後はその日のうちに帰宅できます。
歯科恐怖症の方やパニック障害などでお悩みの方もぜひご相談ください。

治療後について

治療後について

インプラントを埋め込むと顎骨としっかり結合し、硬いものも噛めるようになります。しかし、治療後のメインテナンスをおろそかにしていると、インプラントの寿命が想定より短くなってしまう可能性があります。
インプラントのお手入れを適切に行なわず汚れが付いたままにしていると、歯垢や歯石が溜まって歯肉などに炎症が起きます。これを「インプラント周囲炎」といいます。インプラント周囲炎は歯周病に似た症状で、進行すると出血や口臭が起きるようになります。さらに重症化すると歯肉が痩せてしまい、埋め込んだインプラントが脱落してしまうおそれがあります。
インプラント周囲炎を予防するためには日々の適切な歯磨きと、治療を受けた歯科医院で定期的にメインテナンスを受けていただくことが不可欠です。健康状態のチェックやクリーニングを受けることで、インプラントを長く使えるようになります。

インプラントによる治療にともなう一般的なリスク・副作用

  • ・機能性や審美性を重視するため自費(保険適用外)での診療となり、保険診療よりも高額になります。
  • ・インプラントの埋入にともない、外科手術が必要となります。
  • ・高血圧症、心臓疾患、喘息、糖尿病、骨粗鬆症、腎臓や肝臓の機能障害などがある方は、治療を受けられないことがあります。
  • ・手術後、痛みや腫れが現れることがありますが、ほとんどの場合1週間ほどで治ります。
  • ・手術後、歯肉・舌・唇・頬の感覚が一時的に麻痺することがあります。また、顎・鼻腔・上顎洞(鼻腔の両側の空洞)の炎症、疼痛、組織治癒の遅延、顔面部の内出血が現れることがあります。
  • ・手術後、薬剤の服用により眠気、めまい、吐き気副作用が現れることがあります。
  • ・手術後、喫煙や飲酒をすると治療の妨げとなるので、1週間は控えてください。
  • ・インプラントの耐用年数は、口腔内の環境(骨・歯肉の状態、咬み合わせ、歯磨きの技術、メインテナンスの受診頻度、喫煙の有無など)により異なります。
  • ・毎日の清掃が不十分だった場合、インプラント周囲炎(歯肉の腫れや骨吸収など)を引き起こすことがあります。

麻酔薬の使用にともなう一般的なリスク・副作用

  • ・歯肉に塗布する表面麻酔や、一般的な歯科治療で歯肉に注入する浸潤麻酔は保険診療となります。インプラントによる治療などの自費診療(保険適用外)で笑気吸入鎮静法、静脈内鎮静法、全身麻酔を行なう場合は自費診療となり、保険診療よりも高額になります。保険診療となった場合も、高額になることがあります。これらの麻酔法を保険診療で行なうには治療内容など条件がありますので、詳細は歯科医師にご確認ください。
  • ・静脈内鎮静法の実施により、薬剤による影響や全身疾患との関連から重篤な副作用を引き起こすことがあります。持病のある方は注意が必要なので、事前にお申し出ください。
  • ・麻酔薬の影響ではなく緊張状態や麻酔注射時の疼痛により起こる脳貧血により、悪心、吐き気、手足の震え・痺れが起こることがあります。
  • ・麻酔効果が切れるまで口の中の粘膜や唇の感覚が麻痺しているため、唇を噛んだりやけどなどをしないよう、食事は避けてください。
  • ・アルコールにより血流が良くなり、出血・腫れ・痛みが増してしまうことがあるため、飲酒は避けてください。